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吉高由里子さん主演のドラマ「わたし、定時で帰ります。」の第三話では「会社、辞めようかなぁ」が口癖の新入社員・来栖泰斗(泉澤祐希)が仕事でミスを犯してしまい、上司からの叱責で意気消沈して本当に会社を辞めようとしてしまう。
教育係の東山結衣(吉高由里子)は来栖の考えていることが分からず途方に暮れるが、上司で元婚約者の種田晃太郎(向井理)に誘われて参加したフットサルでの出来事から学び、来栖と正面から向き合って前を向かせることになる。
この回では「すぐに辞めたがる新入社員」の扱いがテーマになっているが、ここでの東山の対応は新入社員に限ったものではなく、すべての人とのコミュニケーションにとって大事なことを教えてくれる。
それは「傾聴」と「共感」、そして「承認」である。
東山は来栖が犯したミスのフォローで余計な仕事が増えてしまった上、会社を無断欠勤して遠出した来栖を迎えに行かされる。
普通なら怒り心頭で来栖の言い分に耳を貸さず、「つべこべ言わずに謝りにいくぞ」と言いそうなものだが、東山は来栖の言い分にしっかりと耳を貸し、決して途中で遮らない。
東山が自分の話にしっかり耳を傾けてくれるから、来栖は徐々に自分の心を開いて本音を伝えるようになる。
このことは「当たり前じゃないか」と思われるかもしれないが、実際にやってみようとすると案外難しいものだ。
相手の話が自分の考えにそぐわない時に「いや、そうじゃなくて・・」と話を遮ってしまったり、話の先が見えてしまって「で、こうなったのでしょう」などと結論を先取りしてしまったりすることがあるのではないだろうか。
しかし、これをやってしまうと相手に「この人に話してもどうせちゃんと聞いてくれない」という無力感を植え付けてしまい、もう簡単には心を開いてくれなくなってしまうだろう。
そうならないために、人とコミュニケーションを取るときには自分が何を話すかではなく、相手の話を最後までしっかり聞くことに集中し、しっかりと相槌を打つことで「あなたの話をちゃんと受け止めていますよ」という暗黙のメッセージを伝えよう。
東山が来栖と何度もコミュニケーションを重ねた上での屋上のシーン。
来栖は「僕なんて何の役にも立たないし」と辛い胸の内を明かす。そこで東山は「そうだよねー・・(中略)気持ち分かるなーと思って」と、来栖の気持ちを受け止めた上で共感していることを言葉で伝える。
そこから自分が新人の頃の似た経験をしたことを話すことで、表面的な同情ではないことを暗に伝えている。
その上で、「でも新人なのに完璧に仕事ができる方が変じゃない」と自分の意見を述べる。
来栖からの言葉に対して即座に「そう思うのなら役に立てるようにもっと頑張れ!」と言ってはダメなのかと思う人もいるかもしれないが、これは完全にアウトである。
来栖は自分が頑張っているのに認められない、辛い気持ちを理解してもらえていないと思い、事態を悪化させてしまうだろう。
相手の心情を察し、心から共感しているということを伝えた上で自分の意見を伝えれば、相手もそれを受け入れやすくなり、コミュニケーションはより意義深いものになる。
なお、ここでは東山の意見に対して来栖が反論するが、この時点では自分の気持ちを詳細に語っており、思っていることをしっかり言語化して表現している。
その上で東山が繰り出す次のポイントが活きてくるのだ。
続いて「私は来栖くんのこと好きだよ」と東山が言うが、来栖は納得しない。
そこで、東山は「シュレッダーのゴミとかマメに替えてくれてるじゃん」と切り出す。
これが3つ目のポイント、「承認」だ。
承認とは、「相手の存在や成長、変化や成果に気づき、言語化して相手に伝えること」である。
ただ言葉を投げかけられるだけなのだが承認された側は達成感を感じてモチベーションが上がる。
相手を鼓舞する際、「頑張ってね」というところを「頑張ってるね」に替えるだけで言われた方は自分の努力が認められたと感じ、やる気が向上する。
ただし、承認する際には気を付けなければならないことがある。
それは「評価」の色合いを薄めることだ。
作中では部長の福永清次(ユースケ・サンタマリア)が「来栖くんはこの部署になくてはならない存在だね」と叱咤激励するが、これは福永の評価でしかなく、そのため来栖の心には何も響かない。
相手のことを普段からよく観察し、小さなことでも何かしらの成長や組織への貢献などがあれば、評価を交えずに相手に伝えること。
それだけできっと、相手はやる気を出してくれるだろう。
東山の「傾聴」、「共感」、「承認」を用いた巧みなコミュニケーション術でモチベーションが上がった来栖が次回以降の話で成長した姿を見せるのが今から楽しみだ。