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吉高由里子さん主演の新ドラマ「わたし、定時で帰ります。」が火曜夜10時からの枠で始まった。
主人公の東山結衣(吉高由里子)はWEB制作会社で働くディレクターで、毎日18時ぴったりにオフィスを去り、タイムセールの半額ビールを飲むために行きつけの中華料理屋に駆け込んでいる。
さらに、後輩の新人社員、来栖泰斗(泉澤祐希)にも18時に「上がっていいよ!」と声をかける気配りを見せる。
一方、同じ職場の同僚、三谷佳菜子(シシド・カフカ)は「定時で上がるのはやる気がない証拠」と言わんばかりに毎日長時間の残業を繰り返し、ついに体調を崩してしまう。
ではなぜ、三谷は残業を繰り返すのに東山は定時で帰れるのだろうか。
三谷は仕事に対する姿勢は熱心でサボっているようには到底見えないし、合理的でしっかり仕事をこなしているように見えるが、東山との違いはどこにあるのだろう。
オフィスでの2人の動き方をよく見ると、それが次の3つの理由によるものだと分かる。
まず最初の理由は東山が使っている「付箋」にある。
東山は予め「やるべきこと」を付箋に書いて自分のパソコンに貼っておき、1つ終えるごとに付箋を1枚剥がしている。
このことから、彼女が1日の最初に「やるべきこと」を可視化して1日の作業量を見積もり、定時までにどれくらいのペースで進めたらよいかを計算し、都度進捗を把握しながら仕事を進めていると考えられる。
そして、付箋を効果的な「仕事のビジュアル化ツール」として活用している。
そして、見落としがなければ東山しか付箋を貼っているようには見えなかったが、これを職場全体で行うと別の効果も期待できる。
職場のみんなが同じように付箋を使うことで、今だれがどれだけの「やるべきこと」を抱えているのかが把握できるので、
仕事が終わらず残業になりそうな人を早めに察知し、周りがフォローしやすくなる。
また、急な体調不良などで早退する人が現れた際は作業の引き継ぎ漏れを防ぐ効果も期待できる。
次に、2つ目の理由は「口頭」にある。
東山は後輩に指示を出す際、メールを使わずに口頭で簡潔かつ明瞭な指示を出しており、そこには一切のムダな情報が含まれていない。
これがもし、メールを使用したとすると
(1)「新規メールを作成」→(2)「件名と内容を記入」→(3)「宛先を記入」→(4)「送信」
となり、同じ情報を伝達するのに何倍も時間がかかってしまう。
もちろん、情報が込み入っていたりエビデンス(記録)を残す必要があったりする場合はメールやチャットの方がよい場合もあるが、そうでない場合は極力、電話も含め口頭で伝えてしまった方が圧倒的に早い。
また、これは指示を伝える側だけでなく指示を「伝えられる側」にとってもメリットがある。
口頭で伝えられれば、その際に不明点を「その場で」確認してはっきりさせることができるし、指示の内容がおかしいと思えばやはり「その場で」上司に伝えて考えてもらうことも可能だ。
これをメールでやろうとすると後回しになってしまったり、ニュアンスがうまく伝わらずに無用な誤解を与えてしまうこともある。
口頭で伝えるということは時間の節約になるだけではなく、他者との無用な摩擦を回避することにも繋がる。
そして3つ目にして最大の理由は「決意」にある。
東山は過去のトラウマから、必ず定時に帰ると決めている。
これは言い換えると、自分が仕事できる時間は朝9時から夕方18時の間の8時間(残りの1時間は休憩)として認識しているといえる。
このことは「ただ早く帰りたいだけ」ということとは全く異なり、時間を有限のリソース(資源)と捉え、そのリソースの範囲内で仕事ができるということに他ならない。
これを感覚的にも把握するには時間をお金と読み替えてみれば分かるだろう。
残業しないで仕事することとは、自分が手元に持っているお金が1万円であれば「その中でやりくりしよう」と考えることに近いといえる。
逆に残業してナンボ、の三谷は時間が貴重な資源だとは気づいておらず、無限に湧き出る水のように捉えているのではないだろうか。
それでは節約しようという気にならないのが当然だ。
そして、経営の視点においても「残業代」というものが存在する以上、会社側からすると「残業」とは、定時で仕事を終えていれば本来払う必要のなかった余分な出費に繋がる以上、やはり本来はなくすべきものだろう。
第一話を観た限りでは以上3点を押さえているからこそ、主人公・東山は定時で帰れていると考えられる。
次週以降ではブラックな上司とのやり取りや様々なトラブルが起きるようなので、東山がどう切り抜けて定時上がりを死守できるかが見ものだ。