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社長ブログ

「わたし、定時で帰ります。」の例を通して「社員を守る3つのゆとり」を考える

私定時で帰ります最終話

吉高由里子さん主演のドラマ「わたし、定時で帰ります。」の最終話では、元々ギリギリの予算とスケジュールで受注した案件なのに、さらに無償でキャンペーン構築を請け負っていたところに「外注先の倒産」というダメ押しのトラブルが発生してしまう。主人公・東山結衣(吉高由里子さん)のチームは連日の長時間残業と休日出勤でどうにか納期に間に合わせようと奮闘するが、ついに東山が過労で倒れてしまう。「絶対に定時で帰る」主人公が昼夜を問わず働き続けた挙句に倒れるというのはショッキングな展開だが、そもそもこんな事態に陥ってしまったのはマネジメントの責任によるところが大きい。ではどうすればよかったのか、3つのタイミングで入れるべき「ゆとり」をキーワードに考察する。

社員を守るために確保すべき「ゆとり」その1:提案時に考慮すべきゆとり

前述したように、そもそもチームが残業を強いられるようになった元凶は東山の上司・福永清次(ユースケ・サンタマリアさん)がクライアントの星印に対して採算度外視の価格と厳しい納期でサービスを提案し、受注してしまったことにある。

これは完全に「提案時のゆとり」を考慮せずに話を進めてしまったといえる。

提案時には通常、相手に対して適正なサービスを適正な価格と納期、品質基準で提示するべきだ。なお、この「適正」には色々な基準が考えられるが、ここでは単純化して一定程度の「ゆとり」を含んでいることと捉えることにする。

そしてここでの「ゆとり」とは経験上もしくは統計上、ある程度想定しておくべきリスクが顕在化したとしても十分に対応できるだけの予算、時間、工数を確保することだ。

この「ゆとり」を入れないで受注するということは、東京駅から鹿児島中央駅まで車で荷物を運ぶ際、検索エンジンで調べたところ距離が1361km、時間が16時間5分と出たので、ガソリンを走行予定距離ぴったりの1361km分積んで、16時間5分後に配達先に荷物を届けることを確約した上、ドライバーを1名しか用意せず、配達先には積んだガソリンとドライバー1名分のコストをそのまま請求するのに等しい。その結果がどうなるかは自明の理だろう。

社員を守るために確保すべき「ゆとり」その2:作業計画時に考慮すべきゆとり

提案内容に「ゆとり」を持たせたからといってまだ安心してはならない。物事が当初想定通りに進むとは限らないので、その点を考慮して作業計画を立てる必要がある。それをせずに作業計画を立ててしまうと、本作で「外注先が倒産してしまった」などのトラブルが発生した際にチーム全員が長時間残業と休日出勤で対応せざるを得なくなってしまうなど、無理が生じてしまう。

そのため、できれば計画立案時には納期より数日前、(場合によっては1週間前など)

には全ての作業が完了するように考えておき、最後に「ゆとり」を持たせるべきだろう。もちろん、各工程の作業の工数を適正に見積もることは前提だ。なお、この「ゆとり」は各工程に持たせるのではなく、最後にまとめて置いておくことが肝だ。

現実問題として、各工程の作業スケジュールに「ゆとり」を持たせてしまうと「まだ余裕があるから」と社員がダラダラ仕事をしてしまい、イレギュラーが発生しなくても「ゆとり」を食いつぶしてしまう可能性と、最終工程においてトラブルが発生した際に十分対応できる猶予が残っていない可能性が出てきてしまう。それでは「ゆとり」の意味がなくなってしまうので、最終工程の完了予定時期を納期より早めに置くことが大事だ。

この「ゆとり」を最後に入れないと、先ほどの例で言えば「東京から名古屋まで」や「名古屋から大阪まで」など、各区間にゆとりを持たせていたとしても最後の最後、鹿児島中央駅に到着する直前にトラブルが発生するとその時点で納期に間に合わなくなってしまう恐れが生じてしまう。そうならないために、最終目的地の鹿児島中央駅への到着予定が納期より早くなるように計画を立てておくことが重要だ。

社員を守るために確保すべき「ゆとり」その3:作業遂行時に考慮すべきゆとり

これまで見てきた2つの「ゆとり」は、仕事を開始する前に考慮すべきことだった。一方で、どれほど事前に万全の体制を整えたつもりでも、完全に想定外の事柄が起きることはある。それに対応するために、実際に仕事を進めていく途中にも「ゆとり」を入れておこう。

これは仕事を進める上でトラブルが起きることを未然に防いだり、もしくはトラブルが発生しても影響を回避もしくは軽微に済ませたりするために必要な「リスク対応のゆとり」で、トラブルが起こる前に時間的な「ゆとり」を持ってリスクを感知し、共有し、行動に移せるような仕組みを入れておくことだ。

作中では「外注先が不穏な状況かもしれない」ということをエンジニアがアウトプットを通して事前に把握していたにも関わらず放置した結果、ある日突然「倒産する」という最悪のトラブルの発生を予想し損なってしまったのであり、早めのリスク感知はできたものの対応を怠ったことがまずかった。

ここで、「リスクの感知」とは先ほどの車の例で言えば、ガソリンが少なくなってきたことを示す警告灯の点灯のようなものであり、例えばガソリン残量が100km分以下になったときに光ることでドライバーに給油を促すようなものだ。なお、この「ゆとり」がないということは残り1kmの時点で警告灯が点灯するようなもので、もはやガス欠は免れそうもない事態に陥ることは必然だろう。

ここまでで、3つのタイミングで入れておくべき「ゆとり」についてご説明してきたが、その重要性をご理解頂けただろうか。

提案時、作業計画立案時、作業遂行時の各々において「ゆとり」を入れて頂くことで社員が無理せず健康的に仕事を進めていけるような環境にしてもらえたら筆者としてそれ以上に嬉しいことはない。